料理において最も馴染みがある調理方法は「加熱」です。
フライパンを使って焼いたり炒めたり、特に野菜炒めは料理の登竜門。誰しもが通っていく道です。
熱には大きく3種類あり、それぞれの違いを理解しておくと料理の腕前が上がる!かも?なので書きます。
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そもそも熱ってなに?
一言で言うならば、エネルギー。エネルギーには様々あって、電気エネルギー、光エネルギーや原子核エネルギーなど。僕たちはそれらを他のエネルギーに変換することでうまく活用しています。例えば、IHクッキングIHーターは電気エネルギーを熱エネルギーに変換することでフライパンや鍋が熱せられて料理することができます。エネルギーは様々に変化しますが、失われることはなく、必ず何かに変化して存在します。
悲しいことに、なんとエネルギーの変換は完璧に行うことができません。例えば、ソーラー発電。太陽(光エネルギー)を電力(電気エネルギー)に変換していますが、変換効率100%は実現できません。
少しデータが古いのですが、太陽光発電の場合は1位でも20%ほど。太陽光100のエネルギーのうち20しか活用できていないということです。
えーじゃあ残りはどうなってるの?と僕も思いますが、さっき言ったようにエネルギーはなくなることはありません(エネルギー保存の法則)。多くは「熱エネルギー」に変換されます。スマホを充電すると、本体が熱くなったりしますよね。あれも100%全てが効率的に変換できていないため熱に変換されてしまい高温になるのです。ここでは以下を理解してください。
- エネルギーを様々に変換することで僕たちは生活に活用している
- エネルギーは必ず変換されたり移動する。元のエネルギー量は消失することはない
- うまく変換できなかったエネルギーは熱エネルギーになる
正直、上の話はそれほど重要ではありませんが、知っておくと料理のどこかで役立つかもしれません。例えば、オーブンで肉をローストするときの加熱は「熱エネルギーを肉に移動させること」です。肉に移動した熱は内部に留まったり外部に放出されたりすることで火が通るわけで、オーブンの外に出してからもその反応は続きます。それが予熱。ちゃんと予熱分も計算して調理しないと焼きすぎたりしちゃうんですよね。
それでは熱3パターンを見ていきましょう。
対流
水や空気によって熱が移動する現象です。
水や空気は温められると膨張して体積が増し密度が小さくなるので、上に上に上昇する性質があります。冬の室内で天井付近の空気が暖かく、床の空気が冷たいと理科で勉強したアレです。
基本的に料理において加熱は下方向からするものが多いので、まず先に下にある水や空気が温められその水や空気が上昇した分、上部の冷たい水や空気は下に移動し、次に上昇した水や空気は水面や天井にぶつかって下に降りていきます。この繰り返しによって流れが生じます。
下部が温められ上昇する→上部は下に移動する→上昇した水谷空気は天井にぶつかり下に移動する
茹でる、煮る、蒸す、オーブンの調理はこの対流熱を利用したものです。
- 液体の対流:茹でる、煮る
- 空気の対流:蒸す、オーブン
伝導
物体の中を熱が移動する現象です。
熱は「高温」から「低温」へ移動する
熱の性質です。
そのため、ガスコンロの火(高温)でフライパン(低温)を熱するとフライパンが熱くなります。沸騰したお湯を常温に置いておくと水温が下がっていくのもそれ。お湯の熱エネルギーが湯気(水蒸気)となって空気中に放出されたため水温が低下します。
物体の熱を伝える力を測る数字として熱伝導率があります。僕たちにも馴染みのある言葉ですよね。熱伝導率は高ければ高いほど、たくさんの熱を伝導させられます。少ないエネルギーで、短時間で加熱ができるということです。
物質 | 温度(℃) | 熱伝導率 |
---|---|---|
銅 | 100 | 395 |
アルミニウム | 100 | 240 |
鉄 | 100 | 58 |
ステンレス | 100 | 16.5 |
水 | 10 | 0.582 |
空気 | 0 | 0.0241 |
キッチン周りの主要な熱伝導率です。銅〜ステンレスの金属に比べて水や空気の熱伝導率が圧倒的に低い。冷凍したものを解凍するときに流水にさらすor自然解凍よりも金属の上で解凍する(金属と接している面)方が解凍スピードが早いということになります。
フライパンは伝導によって食材を熱する調理方法です。茹でる、煮るも鍋はガスコンロから伝導熱で温められ、それが鍋内部の水に伝わり対流熱が生じています。
- 食材を熱する:フライパン
放射
熱を持った物体から”赤外線”が放出する現象です。
どの物体も赤外線を「吸収」し、その熱の一部を「反射」する(厳密には「透過」もあるがここでは取り上げない)
こうした熱の性質もあります。
みんな大好き焼肉は炭火が一番美味しい(気がします)よね。それはガスのロースターとは肉の焼き方が異なるからなんです。思い出してみると、ロースター(ガス火)焼肉の場合はガッチリしたガチムチ系の分厚い鉄板の上で肉を焼きます。一方で炭火焼肉の場合はヒョロっちい薄い網の上で肉を焼きますよね。
活用している熱の種類が違います。
- ロースター:熱せられた鉄板によって肉を焼く(伝導熱)
- 炭火:熱せられた炭から放射される赤外線によって肉を焼く(放射熱)
赤外線は厳密には熱ではありません、電磁波です。食材に吸収されて初めて熱となります。熱は何か物体(媒介物)を移動しながら伝わっていきますが、電磁波は媒介物が必要なく光速で物体まで届きます。そのため赤外線調理である炭火焼肉は短時間で肉を焼くことができます。
放射熱である赤外線は料理においてとても素晴らしいチカラを持っているのですが、残念ながらガスや電子レンジ、オーブンなどの家庭内調理方法では赤外線量は多くありません。やはり炭火で焼く(放射熱を利用する)のがもっとも赤外線量が多いのですが、いかんせん安全面や近所への配慮の面からなかなか実現は難しい。。。
と思っていたら、
遠赤外線をよく吸収する材質をあげると、水、天然および合成樹脂、ゴム、塗料、木材、繊維、紙、各種動物性・植物性食材、ガラス類、天然および人工セラミックス類があります。
(参考):セラミックスとは、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、ジルコニウム、チタン等の各種金属元素と酸素、窒素、炭素、ホウ素等との無機化合物、及びそれらの複合化合物の総称です。
このうちセラミックス類は一般的に耐熱性があるので、それらを別の手段で加熱して表面温度を高くすれば、そこから遠赤外エネルギーが多く放射されます。
セラミックの放射する赤外線量は多いとな。。。セラミックを使えば美味しく調理できるんじゃ?!
※赤外線について、詳しくは別の機会に書きます。
参考文献
ひかる