こんばんは。ひかるです。
コロナで巣篭もり生活となってから、めっきりと外食する機会が減り(もともと自炊が多かったのだけど)、家で料理することが増えた最近。
マクロ的にも外食を控える動きが顕著で飲食店の売上が落ち込み、食材の市場価格はどんどん下がり、結果たくさんの食材が売れ残ってしまっています。
飲食店も苦しいのですが、その先にいる生産者も同じく苦しいわけで、「売れ残った食材を買って生産者を助けよう」といったスタンスから生産者通販ともいえる「ポケットマルシェ(ポケマル)」や「食べチョク」といったサービスが活況になっているように感じています。
>>ポケットマルシェ|産地から旬の野菜・果物・魚を農家・漁師直送で
>>食べチョク|農家・漁師の産直ネット通販 – 旬の食材を生産者直送
どちらのサービスもその構造はメルカリと同じで、ただし出品できるのは生産者だけ。生産者が自分が育てた(獲った)野菜、魚、肉に米etc.様々な食材を出品。出品物が購入されたら販売手数料としてプラットフォーマー(ポケマル・食べチョク)に一部を支払う、というモデルです。
生産者からすると、こうしたサービスは新しい販売チャネルとなり、また昨今の市場価格の低迷や市場での販売不振を補うことができ、僕ら消費者からすれば、生産者から直接食材を購入することでその途中にある中間業者すなわちマージンを抑えられるから低価格で手に入れることができる、というような立て付けになっているようです。
はてさて、実際のところはどうか。どちらのサービスも使ってみましたが、ちょっと違うように思いました。このエントリーではポケマル・食べチョクに代表される生産者通販の使い所について考えてみたいと思います。
CONTENTS
生産者通販の残念なところ:情報の非対称性がもたらす「商品クオリティ」
漁師から新鮮な魚介類を購入してみました。その日水揚げされたものの中から漁師お任せの魚が同梱されるというものでした。
届いたのは3種。
- ニギス × 12尾
- 麦いか × 9杯
- カレイ × 4尾
ニギスなんかは痛みやすく、生の状態ではなかなか市場には出回らない関東では珍しい魚です。それぞれは美味しくいただきました。
>>カレイの中毒性。一夜干しにするとまるで雰囲気が変わるのだ。
ただし、届いたものの満足度はあまり高くありませんでした。理由は2つ。
魚がケガをしている
ケガとは身が痛んでいることを指します。特に顕著だったのは二ギス。もともと水分量が多く身が柔らかいためにちょっとでも雑に扱うと身が割れたりしやすい魚なのですが、尾ビレが折れていたり、身が欠けているものがほとんどでした。
麦イカについても正体不明の「ささくれ」が無数に胴体に突き刺さっており寄生虫なのか、漁網の一部なのか僕には皆目判断できず。口にするのをやめときました。
同じように食べチョクで購入した青梅5kg。梅干し・梅酒づくり用にと思ったのですが、こちらも残念なことが。。
自宅で追熟させていくと、黒い斑点が出てきました。生産者に問い合わせてみると「そのまま追熟させると腐っていく」とのこと。これにはびっくりで、その原因はどうやら「輸送中の痛み」のようです(生産者談)。
確かに段ボールに緩衝材なしに5kgもの梅を直入れしていたので、自重や輸送中の揺れなどで痛むのは想像しやすい。一般的に流通する青梅はどのような梱包かは分かりませんが。。これにはちょっと残念。うまく梅干しや梅酒ができればいいのだけれど。
サイズが小さい
普段から馴染みのあるカレイやスルメイカのサイズがとにかく小さかった。サイズにして15cmほどでしょうか。
スルメイカの小さいのは麦イカと言ってこの時期ならではで身が柔らかくだったりするのですが、これだけ小さいと調理法が限られてくるなあという印象。カレイに至っては、可食部分が少ないのだからどんな調理にしても食べた気がしません。。
サイズが小さい分、数が多く入っていたのかも知れませんが、消費者目線でいえば、しっかり食べ応えのあるサイズのものがいくつかあれば十分だったりします。
以上はたまたま生じた事象かも知れません。ただ、今回のことは生産者・僕ら消費者の間にある”情報の非対称性”がネガティブに働いたと言えるかも知れません。
情報の非対称性については説明不要かと思いますが、商品についての情報量は当然に生産者側が圧倒的です。僕らは詳しいことはわかりません。
たとえば、二ギスは「珍しい魚ですよー」というのは嬉しい反面、それは痛みやすいからであって。関東では干物に加工されたニギスが定番です。案の定、届いたニギスの多くはケガをしている。
今回のカレイや麦イカのサイズ感は、市場では値段がつかないようなものなのでポケマルなどの生産者通販に回した、というようにも考えられます。青梅も段ボール直入れのシンプルな梱包状態で輸送や追熟による痛みが進みやすい品物だと事前に理解していれば購入を思いとどまったなあと思います。
なんだか愚痴っぽくなってしまって恐縮なのですが、生産者側に悪意はないのかもしれませんが、生産者にとって「当たり前」なことも僕ら消費者にはわからないことがたくさんあって。商品が届いてみて「こんなはずじゃなかった」と思ってしまったり。
ポケマルも食べチョクも、購入前に出品者(生産者)と直にコミュニケーションの取れる仕組みはありますが、肝心の消費者(同時に生産者も)は「何が『わからない』かが『わからない』」状態なので質問のモレはどうしても発生してしまいます。
「事前に納得した上で購入してほしいし、そうしたよね?」とはどうしても了解できにくいのがもどかしいところです。
生産者通販の残念なところ:送料まで考慮すると決して安くはない「合計価格」
生産者通販を使ってみて当初想定していたのは「中間業者を介していないからコスパがいい」みたいなところでした。
ところが蓋をあけてみると、先述のように商品クオリティは今一歩。さらに、クール便での発送となると送料だけで1,000円オーバーは珍しくありません。
商品価格2,000円前後とそれだけなら市場価格的に割安でも、送料含めてしまうと1.5倍の3,000円。僕ら消費者が支払う代金の30%もの部分を輸送代に支払うと言うのはコストパフォーマンスの観点からいくとムダが多い気がします。
卸や小売。中間業者の価値
情報の非対称性、送料の観点から生産者通販の残念なポイントを書いてきましたが、皮肉なことに生産者直売の生産者通販を通じて、中間業者が介在する価値を改めて認識することとなりました。
情報量が豊富な中間業者によって、品物を適切な状態で(時には加工し)、適切なタイミングで販売することで僕ら消費者が悩んだり困ったりする手間を”僕らが気づかないうちに”軽減してくれます。
また、価格についても大量一括輸送などスケールメリットがはたらくことで、僕ら消費者は安く品物を手に入れることができます。
「中間業者をすっ飛ばすから、安くなる・メリットがある」確かに時と場合によってはこれが真になるシチュエーションもありそうですが、僕ら消費者、生産者双方のリテラシーや周辺の技術の向上がなければ、この世界はまだまだ実現しなそうな気がしました。
生産者通販はこんな時に使おう
ここまでずっと生産者通販のネガティブな話ばかりしてきて申し訳ないのですが、活かすも殺すも僕らの使い方次第なサービスです。むしろある場面では積極的に使いたいなと思っています。
「利便性」と「価格」と「品質」。この3つで食材調達を考えると、ポケマルや食べチョクに代表される生産者通販サービスの強みは「利便性」と「品質」にあります。
生産者通販の利便性:家にいながら食材が届く
最初の利点はこれにつきます。買いに行く手間がない。近所の八百屋や魚屋などの専門店、スーパーマーケット。食材を選ぶ・足を運ぶ時間と、持ち帰る手間。米や重量のある食材なら尚のこと宅配便で届けてもらえるのは大きなメリットです。
さらに、このあと後述しますが、ブランド食材ならメリットはさらに強く。たとえば「赤貝」なら、宮城県名取市の「閖上の赤貝」が極上です。閖上の赤貝は扱う小売店(魚屋)は選ぶし、極論、現地宮城まで調達に行くのは現実的ではありません。
生産者通販の品質:「希少ブランド」の指名買い
市場でも手に入るような品質のものではなく、めったに販売されていない希少なブランド食材の購入に生産者通販サービスは適しているように思います。
「品質そこそこ。だけど市場よりも安い」ような食材になってしまうと、先述したような理由で結局のところ満足度が低くなってしまうリスクが大きい。
生産者から直接購入できることを考えると、値段は張ったとしても希少ブランドを指名買いする方がいい。品質は間違いなく、商品価格も高価なので1,000円ばかりの送料が気にもなりません。
もとより、こうした希少ブランドものは高級レストランなどの飲食店に流れてしまい、近所の小売店ではなかなか置いてありません。とはいえ、こうした高価な食材のポテンシャルを遺憾なく引き出す調理技術が僕にはないのが残念ではありますが。。
ブランド食材が自宅での巣篭もりパーティを一段と楽しくさせるのは間違いありません。
ひかる