和牛の岩盤焼きはうまい(が、高い)。石焼きビビンバはうまい(らしい。僕は普通ビビンバが好き)。ピザは石釜で焼くとうまい(と話に聞くが、あまりピザ食べない)。
なんでそんなに石が素晴らしいのかまとめました。
石は「熱容量」と「放射率」が素晴らしく高いんだって。
熱容量が高い石は温度が安定する
熱容量は、自分自身に熱を留めておく能力のこと。耐火粘土でできた釜の熱容量は鉄の2倍、鋼の2.5倍あります。熱容量が高いモノというのは、熱を吸収してもちょっとやそっとじゃ温度は変化しません。それだけだと加熱調理に向いていないように感じますが、一定温度を安定して保ち続けられるというメリットにもなります。
肉やピザ生地などの食材(熱せられた石よりも圧倒的に冷たい)が石の中や上に放り込まれても温度が下がらない、一定温度で安定して加熱することができます。確かに石焼きビビンバっていつまでも熱い。猫舌にはキツい3大料理の1つです。
放射率が高い石は赤外線で美味しく加熱できる
熱の3要素の放射熱。放射しているのは熱ではなく正しくは電磁波である赤外線。
そして赤外線が美味しく加熱するために素晴らしい特徴を持っているのでした。
放射率とはそのまんま赤外線を外に放射する数字です。熱源(ガス火や炭火など)から放射された赤外線は周囲の物質の分子が吸収し、すぐにその赤外線を外に再放射しますが、金属は吸収した赤外線のほとんどが再放射されないことがあるのです(消散)。吸収した赤外線のうちどれだけ再放射できるかを示した数字が放射率。
一般的な家庭用オーブン壁面で使われているステンレスの放射率はたったの16%(吸収した赤外線の84%が消散!)。84%はオーブンの壁面に留まり続け、食材の加熱には使われないというムダムダムダ。アルミニウムの放射率は5%、鋼は2%です。
ややこしいのですが赤外線それ自体は熱ではありません。赤外線は物質の中に吸収されることで初めて熱に変わります。赤外線を物質が吸収すると、物質の分子は活発に動き始めます。ねじれたり回転したり宙返りしたり、それはもう3Dにアクロバティックに動きます。例えるならパーリーピーポー。そのパリピな分子は隣に静かにしている真面目系分子にぶつかることで、真面目系はパリピに変身し、また隣にいる真面目系にぶつかってパリp…。ということの繰り返しでパリピ分子が増えていきます。
この一連の過程が加熱。つまり温度とは分子の動きのスピードで表されています。高温というのは分子の速度が早くてパリピで盛り上がっている状態、低温は分子の速度が遅くて真面目系分子として落ち着いている状態というわけです。
パリピ分子はいつまでも遊んでいるわけには行きません。いつだって明けない夜はないからです。パリピだって朝になれば真面目に出勤します。赤外線を吸収したパリピは真面目に戻るために赤外線を再放射しようとします。
なぜ金属は放射率が低いかというと、金属内部には自由電子があり中を自由に移動しています。この自由電子が縦横無尽に移動するためにエネルギーを吸収してしまい外に出さないから。ちなみに、この自由電子が移動することが電流。金属が電気を通す理由です。
一方で石は吸収した赤外線のほぼ全てを再放射します。濃い色のレンガなら90%、大理石93%、タイル97%というハイスペックさ。これらの物質は分子の位置ががっちり固定されているために、吸収したあと赤外線を留めることができずに再放射するのです。石は赤外線を受け入れ、受け入れた分だけ放射して冷静さを保つ。そんなタフガイなのです。
まとめ:石焼きは色々と金属よりも優れた調理方法だ
金属に比べて石は温度が安定し、放射する赤外線量が多い。このことは石がある条件では加熱調理に適しているということでもあります。
一定の温度で、じっくりと加熱するような料理。例えば、ピザやステーキなどで取り入れてみたい調理法です。
参考文献
ひかる