炭火の焼肉やBBQは美味しい。けど、家のガスコンロでつくる肉料理はなんか美味しくない。
その謎がわかりました。そもそもガスと炭火は全く違うものでした。
どちらも「熱くて食材を加熱するもの」としては同じですが全然違うもの。
ガスも炭も分子式を見てみると全く違うもの
キッチンのガスコンロから出てくるガスは2種類あります。都市ガスとプロパンガス(LPガス)。都市ガスとプロパンガスの何がどう違うって、プロパンガスの方が高いから家探しは都市ガスの住居がいいよーってだけじゃなかった。
化学的には分子式違います。
- 都市ガス(90%がメタンガス):CH4
- プロパンガス:C3H8
どちらもC(炭素原子)とH(水素原子)の炭化水素から成り立ってますがその数が違う。だから何?ですが、えーと、ただ違うよって言いたかっただけです。CとHでできてて実はこの2つのガスも微妙に違うものなんだよーというだけ。
炭の分子式は
- 木炭:C
たったこれだけC1個。これが大切で、ガスはCとHでしたが、炭はCのみ。Hは必要ありません。Hの有無で何が変わるのか。燃やしたときに発生するものが違います。
- 都市ガス:CH4 + 2O2 → CO2 + H2O
- プロパンガス:C3H8 + 5O2 → 3CO2+4H2O
- 木炭:C + O2 → CO2 , C + CO2 → 2CO
2種類のガスは燃やすと水蒸気(H2O)が発生します。都市ガスはガス1単位あたり1単位の水蒸気、プロパンガスはガス1単位あたり、4単位の水蒸気が発生します。
もっというと都市ガスは1リットルのメタンガスを2リットルの酸素で燃やして1リットルの二酸化炭素と1リットルの水蒸気が発生する。プロパンガスは1リットルのプロパンガスを5リットルの酸素で燃やして3リットルの二酸化炭素と4リットルの水蒸気が発生します。
となると、2つのガスを比べるとプロパンガスの方が水蒸気が多いということになります。分子式で捉えると違いが明確になりますね。
次が重要ですが、木炭からはH2Oは発生しません。プロパンガスの場合、1時間で1.4リットルも水蒸気が発生しています。水は100℃で沸騰してそれから温度が上がらないことが知られています。水蒸気の有無によって温度が異な流、ガスよりも木炭の方が温度が高くなるということになります。そのため、木炭で調理した方が表面がカリッとするのです。
炭からは赤外線が放射されている
これも大きなポイント。炭火は熱の中でも放射によって赤外線を出しています。炭の全電熱熱量のうち75%が赤外線とのことで、ガスは炭に比べると赤外線量は非常に少ない。
ガスは自分自身の火によって空気を温めたり(対流熱)、フライパンや鍋を温める(伝導熱)ことで食材を加熱します。赤外線は熱ではなく、電磁波です。電磁波である赤外線は光速で食材まで到達し、電磁波の特性から風の影響を受けずに食材まで到達するため屋外調理に向いています。残念ながら赤外線の効果は科学的にまだ不明なところがありますが、僕たちは炭火調理が美味しいことを経験的に理解しています。
炭火に近い調理環境は再現できる
しかし、炭火調理と同等の環境(熱源温度や赤外線など)を作れれば、炭火調理に劣らない加熱ができることを以下の論文では示しています。ガスコンロ、焼網、鉄弓によって「炭火の強火の遠火」を再現できるとのこと。面白い、これに赤外線放射量の多いセラミック製焼き網を組み合わせて今度やってみよう。
参考文献
>>一般社団法人日本エレクトロヒートセンター|赤外・遠赤外加熱の原理
>>炭焼き加熱特性の解析(第1報) : 熱流束一定条件下での伝熱特性の比較|辰口直子,阿部加奈子,杉山久仁子,渋川祥子(2004)日本家政学会誌
ひかる
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