こんばんは。ひかるです。
赤提灯居酒屋の料理を自宅キッチンで再現するブログ。今日は「コハダの酢じめ」です。
コハダ以外にもサバあたりも酢じめ調理してして食べる魚ですが、酢じめにはどんな意味があるのかについてもまとめました。
サマリー
- コハダは成長サイズで名前が変わっていく出世魚
- コハダの旬は夏(7〜9月)
- 「酢じめ」には色々な意味があったとさ
CONTENTS
コハダは名前が変わっていく出世魚
以前に取り上げたイナダと同じようにコハダもサイズが大きくなるごとに名前が変わっていく出世魚です。
- シンコ(約4〜6cm)
- コハダ(約10〜14cm)
- ナカズミ(約15cm)
- コノシロ(約17cm以上)
生後3〜4ヶ月ぐらいまでをコハダの稚魚としてシンコといいます。お寿司屋さんで握られるのは「シンコ・コハダ」まで。ナカズミほど大きくなってしまうと皮が硬く、味も大味になってしまうからだそうです。
コハダの旬はいつ?
初春から初夏が産卵期のコハダは、夏のころに稚魚であるシンコが市場に出回り始めます。
シンコは江戸前寿司のど定番ですよね。身の小さいシンコのさばいた身を何枚かつけて握るお寿司の美しさと言ったら・・・じゅるり。かつて8月に初物が出回っていましたが(1〜3枚づけ)、最近ではさらに小さいサイズが6月下旬には出回るようになり、7枚づけで握られることが本流になってきました。
コハダの産地といえば、最近では静岡県浜名湖近くの舞阪。他にも東京湾、愛知県三河湾も。
そんなこんなで梅雨明けごろで季節の変わり目を感じさせる寿司ネタがシンコ。美味しい旬の季節は7〜9月ごろです。ああ、愛おしいシンコ。
コハダを酢じめにする理由
コハダを酢じめ(その前には塩じめにする)にするのはなぜでしょうか?
コハダは柔らかい身と小骨の多さ、また特有の香りがあることが特徴の魚です。基本的には生食しない。
そんなコハダを美味しく食べるために欠かせないのが「酢」な訳ですが、調べてみると酢の効果がすごかった。
酢じめの効果1:小骨が柔らかくなる
骨の主成分はカルシウムとコラーゲン。中でもリン酸カルシウム(ヒトの骨や歯の主成分でもある)は酸性に反応して溶けます。
お酢は言うまでもなく酸性の食品なので、コハダを酢締めにすると小骨が柔らかくなり食べても気になりにくくなるというわけ。
酢じめの効果2:うま味の流出を防ぐ
魚肉の主成分はタンパク質ですが、お酢はタンパク質を凝固させる作用があります。
これは(肉を焼くのと同じように)タンパク質の熱編成と同じ作用で、タンパク質の中でも水に溶けやすいタンパク質が酸性のものに反応することで水に溶けにくくなり、タンパク質分子がくっつき固まるわけです。
先述したようにコハダの身は柔らかいわけですが、酢じめにすることで身崩れしにくく、またうま味成分が水に溶けて外に流出するのを防ぐことがにつながります。
酢じめの効果3:臭みを消す
魚は牛や豚、鶏などの肉と比べて匂いが強く「生臭い」印象があります。これは「トリメチルアミンオキサイド」という無臭成分が、魚の死後に細菌の作用によって「トリメチルアミン」という臭いのある成分に分解されるためです。トリメチルアミンはアルカリ性であるため、酸性のお酢を加えることで中和されて臭いを消すことができます。
ちなみに、トリメチルアミンは揮発性が高く気化しやすいため、加熱調理であるフライや焼き魚では「生臭さ」は消えるんだそうです。
酢じめの前に塩じめにする理由って?
酢じめの直前には身を塩じめしますがその理由も。塩の浸透圧効果によって魚肉表面から内部の水分がじわじわと脱水していきます。
脱水されると塩などが内部に浸透しやすくなります。塩が魚肉内部のタンパク質(ミオシン)と反応して保水性・結着性を高めます。読んで字のごとく保水性は食品が水分を内側に留められる力、結着性は肉と肉がくっつく力です。
この作用によって酢のタンパク質変性と同様、タンパク質が水に溶けにくくなるため酢じめの効果を高めることにつながります。
コハダの酢じめの作り方
うんちくはここまでにして、ここからはコハダの酢じめを作っていきます。
わお、コハダを料理するのは初めてですが、わくわくが止まりません。結果、初心者でも簡単にできましたよ。
今回コハダを選んだのは魚屋さんに行ったら珍しく並んでいたから。もう一切迷うことなく手に取りました。握り寿司になっている酢じめのコハダが脳内にパッと浮かんでしまったためです。
購入するのは1山だけの予定でしたが、魚屋さんおまけしてくれて+1山いただいてしまいました。
コハダの大群が我が家にやってきました。25尾ほどで200円。破格です(ただし鮮度的にはどうだろう・・・)。
コハダを腹開きします。初挑戦のため端ガタガタですがなんとかできました。
魚を捌くのは難しそうでいて、実際やってみるとそんなことはなかったり。とにかく数こなして慣れることですね。後半はスムーズに捌けました。
竹ざるがなかったのでボウルにて塩じめ。1時間ほど置きました。コハダを載せる前にもボウルにも直接塩を敷いて皮目も塩が当たっています。
ちょっと経つとコハダから水分が抜けてきます。
時間になったら塩を洗い流し、キッチンペーパーで水気を取ってからお酢の中へダイブ。結構な量のお酢を使うので気をつけて。
酢じめにする時間は季節やコハダ個体、好みにもよるそうで、時間を変えると仕上がりも全く別物になります。この日は味見しながら30分ほどにしてみました。後述しますがもうちょっと時間は短くてもいいかも。
できたー!コハダの酢じめ完了。
1枚丸々だと大きいので、半身に切りつけお皿に盛り付け。これでコハダ3尾分です。
盛り付け方がイマイチよくわからんのですがヒカリモノの皮目を映えるように。
今回の晩酌酒は「農口尚彦研究所 本醸造」。現代の名工に選ばれた杜氏 農口尚彦さんが復帰して作られたお酒。
今日は1人で晩酌です。冷蔵庫にあったキムチとコハダの酢じめでちびちびお酒をクイッと。
肝心のコハダ酢じめはちゃんと美味しい!いやいや、家でもできるんですね。ただ、ちょっと酢の酸味が強く感じられてしまったので酢じめにする時間はもっと短くて良かったのかも。
このあたりは何度もやってみて自分好みの塩じめ酢じめ時間を探り当てるのが良さそう。
残った大量のコハダたちは皮と皮を合わせ、キッチンペーパーを敷いたバッドに並べ冷蔵庫へ。
その後1週間弱、食卓に並びました。保存食ってわけでは全くないんですが、一度に食べきらないで翌日以降に冷蔵庫から取り出してちょこちょこっと食べられるのが自宅で居酒屋する喜びというか楽しみです。
ファミリー用の大きな冷蔵庫にチェンジして、毎日少しずつ色んなもの仕込みーの、常時つまみやおかずが一瞬で食卓に並べられる環境をつくるのが直近の夢です。
次はサバにトライしたいな。
参考文献
ひかる