こんばんは。ひかるです。
今回は久しぶりに理屈エントリーです。
「電子レンジに向いている食材ってなに?電子レンジで温めてはいけない食材は?」
調理器具の中でも、一人暮らしからファミリー、料理をする・しないにかかわらずどんな家庭にもほぼ100%あるのが電子レンジ。料理をしなくてもスーパーで買ってきた総菜やコンビニ弁当を温めたり、冷凍食品を調理したりととても便利。普段から何気なく電子レンジを使っている僕たちですが、このエントリーでは特に料理をする時に電子レンジを使う人向けの内容です。
電子レンジ・食材の特徴を理解してもっと電子レンジを便利に使いましょう。
結論から書くと、電子レンジに向いている食材は「米や麺類・野菜」、向いていない食材は「肉・魚・豆」です。
- サマリー
- 電子レンジは食材内部の水分子を振動させて熱を発生させる
- 電子レンジに向いていない食材は「タンパク質」
- 向いている食材は「炭水化物」
- 根菜類は電子レンジで加熱したほうが料理が効率的になる
CONTENTS
電子レンジでモノが温まる仕組み
電子レンジはマイクロ波の働きによってモノを温めます。「温まる・冷める」という時の「温度」とは分子の運動スピード(運動量)のことを示していて、モノ(今回の場合、電子レンジで温める食材)の分子は(目には見えませんが)常に動き回っています。静止しているように見えても分子レベルでは動いているなんて、文系の僕にはびっくりしました。
「温度」と「運動量」の関係でいくと、モノが高温度状態の時は運動スピードが速く、(運動量が多い)、低温度状態では運動スピードが遅い(運動量が少ない)、それを便宜的に温度という数値で表現されているわけです。
- 温度が高い=分子の運動スピードが速い(運動量が多い)
- 温度が低い=分子の運動スピードが遅い(運動量が少ない)
電子レンジ内部で発せられるマイクロ波は、水分子にエネルギーを与え分子を振動させることで温度を上昇させています。マイクロ波による振動はなんと、1秒間に2,400,000,000回。24億回です。これだけの大きなエネルギーを食材は受けるために水分子の運動量が増大し、食材内部で分子同士がぶつかり合ったりすることで熱が発生する仕組み。
かなり専門的なことを省いて書いていますが、電子レンジのマイクロ波が食材の水分子を刺激することで食材が加熱されるということです。
電子レンジで加熱したくないのは「タンパク質」
さて、ここからがこのエントリーの本題です。電子レンジを使ってはいけない食材についてです。先述したように電子レンジに向いていないのはタンパク質を多く含む食材です。具体的には次の食材です。
- 肉
- 魚
- 豆
なぜタンパク質が多い食材が電子レンジに向いていないかというと、タンパク質の「熱変性」という性質によります。ひかるぶろぐではタンパク質の熱変性について頻繁に言及していますので耳タコな感じもしますが、タンパク質の構造は加熱することで60℃付近から変化して結果的に「硬く」なります。特に肉や魚などの動物の筋肉は熱変性をすることで縮みますが、多かれすくなかれスポンジを絞ったかのように肉内部の水分が流出します。
ひかるぶろぐでは肉料理の加熱方法について「低温調理」や「脱・強火調理」などで取り上げていますが、タンパク質の加熱というのは温度にとても繊細で、急激な温度上昇では水分流出が激しく、食材の品質を著しく損ないます。タンパク質を急激に加熱すると「まずく」なります。
>>トンテキの焼き方のコツをまとめました 〜安い肉を劇的に美味しくしよう〜
電子レンジは現在のところ、食材温度を繊細にコントロールするのは難しい調理器具です。電子レンジは「加熱時間」を目安にコントロールするものの、「食材の目標温度」で調理できる機能は現存する電子レンジにはないはずです。
そういう意味では電子レンジは繊細に温度コントロールするのが難しいため、タンパク質との相性が悪いと言わざるを得ません。冷凍しておいた肉を解凍したら、やり過ぎてしまって火が通り硬くなってしまったなんて失敗は誰しも経験していることです。
電子レンジの加熱に向いているのは「炭水化物(食物繊維)」
電子レンジに向いている食材は「炭水化物」を多く含む食材です。
- ご飯
- 麺類(うどん・パスタ)
- 野菜(特に根菜類)
炭水化物はブドウ糖やショ糖、でんぷんなどの総称で食物繊維も炭水化物のひとつです。
電子レンジに向いている食材として最初に挙げたご飯(炊飯後のもの)は炭水化物の中でも糖質(でんぷん質)が多く含まれています。でんぷん質は「水+熱」によって柔らかくなります(加水分解)。精白米を炊飯するのは加水分解の作用を利用した調理です。パスタやうどんなどの乾麺をお湯で茹でるのも同じ原理です。
一方、野菜についてですが、実は野菜の主成分は「水分」と「炭水化物」です。野菜が炭水化物というのはびっくりですよね。野菜、特にジャガイモやダイコン、ニンジンは常温で硬いのは細胞壁がしっかりしているためで細胞壁の主成分がペクチン質です。ペクチン質は加熱することで分解されて柔らかくなります。ペクチン質が溶けて細胞と細胞の接着力が弱くなると考えられています。ペクチン質もでんぷん質同様、加水分解します。
よって、炭水化物は熱に反応して軟化する性質がありますが、タンパク質ほど温度変化に敏感ではないので電子レンジのように極端に温度変化させても問題ないと言えます。電子レンジを使っても品質を大きく損なわないという意味で電子レンジ加熱に向いている食材です。
電子レンジを使うと料理がもっと手軽になる
そこで僕は電子レンジを料理に積極的に使っています。特に根菜類の調理です。
煮込み料理などで根菜類を鍋でそのまま茹でると時間がかかりますし比例してガス代もバカになりません。そこで下ゆでがわりに電子レンジを使います。たとえば、ダイコンを乱切りして水に浸して電子レンジで15分ほど加熱。
すると、ちゃんと箸がすっと入るほどに柔らかくすることができます。この状態で肉などと合わせれば調理時間の短縮が可能です。肉を電子レンジで温めては品質を損ないますが、ダイコンならその心配もありません。電子レンジで加熱すれば、その分ガスコンロが空くので他の料理を並行して行うことができますし。
じゃがいもなんてでんぷん質を多く含むので、電子レンジがめちゃくちゃ向いています。
食品成分まとめ
最後にこのエントリーで取り上げた主な食材の食品成分をまとめます。タンパク質、水分、炭水化物の含有量を比較して電子レンジに向いている食材、向いていない食材について理解します。
エネルギー | 水分 | タンパク質 | 脂質 | 炭水化物 | 食物繊維 | |
牛肉(肩ロース) | 240kcal | 63.8g | 17.9g | 17.4g | 0.1g | 0g |
鶏肉(もも) | 253kcal | 62.9g | 17.3g | 19.1g | 0g | 0g |
鶏肉(胸) | 121kcal | 72.8g | 24.4g | 1.9g | 0g | 0g |
豚肉(肩ロース) | 157kcal | 71.3g | 19.7g | 7.8g | 0.1g | 0g |
豚肉(バラ) | 395kcal | 49.4g | 14.4g | 35.4g | 0.1g | 0g |
鶏卵 | 151kcal | 76.1g | 12.3g | 10.3g | 0.3g | 0g |
魚(アジ) | 126kcal | 75.1g | 19.7g | 4.5g | 0.1g | 0g |
大豆 | 176kcal | 65.4g | 14.8g | 9.8g | 8.4g | 6.6g |
ご飯 | 168kcal | 60.0g | 2.5g | 0.3g | 37.1g | 0.3g |
うどん(乾麺) | 348kcal | 13.5g | 8.5g | 1.1g | 71.9g | 2.4g |
パスタ(生) | 247kcal | 42.0g | 7.8g | 1.9g | 46.9g | 1.5g |
ジャガイモ | 76kcal | 79.8g | 1.6g | 0.1g | 17.6g | 1.3g |
ダイコン | 18kcal | 94.6g | 0.5g | 0.1g | 4.1g | 1.4g |
ニンジン | 39kcal | 89.1g | 0.7g | 0.2g | 9.3g | 2.8g |
タマネギ | 37kcal | 89.7g | 1.0g | 0.1g | 8.8g | 1.6g |
エノキ | 22kcal | 88.6g | 2.7g | 0.2g | 7.6g | 3.9g |
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
野菜に関する言及は以下を参考にしています。
>>野菜の加熱とペクチン質(渕上 倫子、日本調理科学会誌Vo1.40、2007)
ひかる