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茹でタコを柔らかくする方法。「たこの桜煮」を科学する

こんにちは。ひかるです。

たこの桜煮を科学します。昔からたこは好きなのですが、お寿司屋さんでつまみ出された「たこの桜煮」にいたく感動して。なんでこんなに柔らかいんだああって発狂したのです。なぜかというと、家で作ると柔らかく仕上がらないからです。

お寿司屋さんの場合、たこは生の状態から茹でるので格段に柔らかく仕上げやすい。家庭で手軽に手に入るタコは圧倒的に茹でタコ(もしくは生ダコ)です。茹でたタコを家庭で再度煮る(≒茹でる)のだから固く仕上がってしまうのはどうしても避けられません。なんとか茹でタコを柔らかくする方法はないものか・・・と試行錯誤しました。

化学的なアプローチからタコの桜煮を、茹でタコでも柔らかくする方法を考えます。

無脊椎動物と脊椎動物の違い「ミオシン」と「斜紋筋」

タコについてさっと調べると、2つのキーワードが見つかりました「ミオシン」「斜紋筋」。

まず最初に茹でタコを柔らかくする方法として「低温調理」が頭に浮かびました。牛や豚に鶏などの肉を低温で加熱することで柔らかく仕上げることができるからです。結論、失敗。タコに低温調理は効果がありませんでした。

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牛や豚など僕らが日常的に食べている肉はタンパク質であり、大部分が筋肉です。この筋肉は収縮することで運動し、料理によって加熱されると少なからず縮む仕組みになっています。低温調理をするとこの「縮み」を最小限に抑えることができるので比較的水分が抜けずパサパサせず、柔らかく仕上げることができます。

この低温調理の効果は、筋肉中の「ミオシン」というタンパク質の熱変性を狙っていて、ミオシンは低い温度帯で変性しやすく、変性すると収縮する特徴があります。残念ながらタコの場合、このミオシンが脊椎動物に比べて1/3ほどしかありません。これがタコに低温調理が向いていない一つの原因と僕は考えます。

同じ軟体類でもイカのミオシンは脊椎動物と同水準なのが面白いところで、イカなら低温調理がいけるのかもしれません。今度やってみます。

次のキーワード「斜紋筋」について。イカやタコの軟体動物が持っているこの筋肉は、脊椎動物にはありません。タコの斜紋筋は表面3層、内側2層の結合組織で、特に外側の斜紋筋を収縮させて水を噴射することで海中を移動しているのだそう。また細いコラーゲ ン繊維が縦横に走っており、斜紋筋と同様このコラーゲン繊維がタコの食感の元となっています。

ここからは仮説になりますが、コラーゲン繊維は牛や豚の場合、65℃で収縮し75℃以上でゼラチン質に変化し柔らかくなります。タコのコラーゲン繊維が変性する温度はわかりませんが、牛や豚と同じ温度と仮定すると、豚の角煮のように高温で加熱する方が低温調理よりも効果的なのかもしれません。

以下の文献を参考にしました。

茹でタコを柔らかくする方法

茹でタコを柔らかくする方法について、ここから僕の妄想になりますが、筋肉は収縮(縮む)ことで固くなる特徴があるので、この収縮反応を抑えることができれば、タコも柔らかくなるのではと考えます。そこで茹でタコを柔らかくする方法として2つの方法を提案します。「冷凍する」「筋肉を叩く」。

どちらも狙いは同じ、筋肉組織を破壊することです。

方法1:茹でタコを冷凍する

水分を含む食品は冷凍・解凍によって組織が破壊されます。冷蔵庫で冷凍しすぎた食品が美味しくない理由の一つです。

冷凍すると食品内部の水分が凍ります。水は固体(氷)になると膨張して体積が増えるので食材内部を内側から圧をかけます。この氷が解凍時に水に変化して体積が小さく戻ると内部に空洞が生まれることになります。

この冷凍と解凍によるいわば「破壊」をすれば茹でタコも柔らかくなるのでは、と。

方法2:茹でタコを叩く

次に考えられるやわらくする方法は「叩く」です。

これは牛や豚でも頻繁に行われる手法です。肉を叩くことで(わかりやすく)組織を破壊するわけです。とんかつを揚げるときに肉を叩くことで高温の油の中で肉が収縮せず衣が剥がれにくくなるということが調理シーンで行われています。

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「冷凍する」「叩く」この2つを試した結果、茹でタコを柔らかくする方法として、両方を組み合わせた方がより効果的であるという結論を僕は出しました。

茹でタコから柔らかく仕上げる「たこの桜煮」の作り方

いたって普通のスーパーで手に入る茹でタコをやわらく桜煮に料理します。スーパーで売られている茹でタコはそのまま刺身、たこ焼きで使ったりする用途がほとんど。野菜と煮ることもありますが、タコの弾力ある食感はそのままですよね。

まずは茹でタコを冷凍します。食品は冷凍中でも外部に水分が流出するので長い時間放置するのはNG。冷凍時もなるべく隙間ができないようラップで包み、ジッパーバッグに入れて冷凍室へ。

今回はジッパーバッグごと加熱しないので、100円ショップのもので十分です。

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冷凍した茹でタコを冷蔵室で自然解凍。解凍されたらジッパーバッグに戻し、麺棒(これも100円ショップ)でたたきます。

この工程は料理人の「ストレスチェック」も兼ねていますが、あまりにストレスがたまりすぎていると破壊されすぎて身割れしてしまいます。これはNG。たたくエネルギーを加減して、表面に軽く傷がつくぐらいに抑えてください。

実際に触ってみると、叩いた部分・叩いていない部分で硬さの違いがはっきりわかります。確かめながら茹でタコ全体をしっかり叩きます。

あとは普通に煮ていきます。小鍋を使えば調味液が少なく済みます。調味料の配合はネットのものでいいかも。

落しブタをして調味液がなくなるまで。

煮あげたタコ。赤く変化するのが桜煮と呼ばれる所以ですね。

ぶつ切りにカットしたら茹でタコの桜煮の完成です。しっかり叩いたことで表面に傷がついたり、吸盤が壊れたり見た目が美しくないかもしれませんが「見た目<食感」という価値観の方ならぜひ試してみてください。

生ダコから煮る桜煮と比べると、少し物足りなさはありますが、いつもの茹でタコが1レベルアップしますよ。

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