低温調理の温度について。メリット・原理・やり方

料理科学
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低温調理の温度について考えていきます。なぜ低温なのに調理ができるのか原理にも言及します。

最近のラーメン屋さんでは低温調理されたムッチリしたチャーシューが流行っています。少し前まではチャーシューと言えば焼豚と書くし、煮豚のようにタレやスープの中で肉を煮るものが一般的でした。

僕もラーメン屋さんを通じて低温調理を知りました。家庭で真似するようになって低温調理の魅力に魅せられた一人です。

低温調理の何がいいの?温度が低いことのメリット

低温調理が料理に使われるのは圧倒的に「肉料理」です。特にブロックなどの塊肉や厚みのある肉です。

塊肉や厚みのある肉は肉々しい食感が最高です。厚切りのステーキにかぶりつく幸せといったら。。。しかし、分厚い肉の調理は難しい。

なぜなら肉が分厚いと均一に加熱調理することができないから。よくやってしまうミスはフライパンを強火で熱しところに厚切り肉を乗せ、表面のメイラード反応が進み焼き目がついたら焼き上がりのサインと考えフライパンから取り上げてしまう。

しかしこの焼き方では中心部が冷たく火が通っていない超レアなステーキが出来上がります。僕も何度これを経験したことか。。。牛肉ならまだしも、食中毒のリスクが高く生食禁止の豚肉だとしたら火が通っていない状態は完全にNGです。

低温調理は温度管理がポイント。温度をコントロールすることで食材全体を均一に加熱、さらに袋で密閉させるので旨味が食材の外に流出しすぎないことが低温調理のメリットです。もう少し詳しくみていきます。

低温調理のメリット1:温度管理によって中も外も均一に加熱できる

低温調理は厳密な温度管理によって肉の表面も中心部も均一に加熱することができます。

先ほど書いたようにフライパンであれば金属と接する肉の表面が最も高温で、熱は食材の表面から中心に向かって徐々に進んでいきます。肉表面と中心部の温度差が大きく、表面が食べごろに加熱される頃には中心部の加熱は不十分ですし、中心部まで十分に加熱しようとすると表面は焼きすぎてしまい、硬く美味しくない肉となってしまいます。

低温調理は読んで字のごとく低温を保ち続けます。低い(けれど肉を加熱できる)温度によって肉表面と中心部の温度差が小さくなるため、均一に加熱することができます。

低温調理のメリット2:加熱温度が高くなりすぎない

低温調理は肉と相性のいい調理法です。タンパク質は60℃のような低い温度でも十分に加熱することができます(タンパク質の熱変性)。

むしろ、フライパンのような180℃のような温度では高温過ぎてしまい、タンパク質の変性が進み食感は固く、旨味成分も流出するため結果的に肉の美味しさが失われてしまいます。

低温調理は液体(特に水)の中に沈めて加熱する調理です。水は100℃以上になることはありません(100℃だったらそもそも低温調理じゃないですね笑)。100℃よりもっと低い温度に安定させて食材を加熱することで、タンパク質の熱変性は進みすぎることはなく、フライパン調理とは一味違う、柔らかくてムッチリとした食感、旨味につながる肉汁を逃さないので肉を美味しくすることができます。

水の中に沈めるというと水っぽくなったり旨味が逃げると思いがちですが、低温調理では食材を袋に入れて密閉させます。水と食材が直接触れないので、茹でや煮物と異なり旨味が逃げません。

どうなってるの?低温調理法の原理

低温調理の原理について触れます。キーワードは「温度勾配」と「熱伝導」です。

低温調理の原理:温度勾配

低温調理は温度勾配がありません。温度勾配がないことが低温調理の素晴らしいところです。

温度勾配とは簡単にいえば温度差。フライパン調理は温度勾配が大きく、先ほどのステーキのフライパン調理のように表面は高温で、中心部は低温になります。

低温調理もフライパン調理と同じように食材の外側から内側に向かって加熱します。しかし文字通り低温であることがポイント。

低温調理は中心部も表面も一定の温度になり温度勾配がありません。温度勾配をつくらないことで加熱具合にムラが起きず、中も外も均一な仕上がりにすることができます。

低温調理された肉の柔らかくムッチリした食感は温度勾配がなせる技です。

低温調理の原理:熱伝導

低温調理に限らず料理で加熱に使われる素材は「金属」「空気」「水」です。熱伝導とは物体から物体へ熱が移動する現象です。熱は高温から低温へ移動する性質があります。これを応用したのが加熱調理です。

金属とはフライパン、空気とはオーブン、水とは鍋の水の中と思ってください。それぞれの熱伝導率は以下のようになっています。

物質温度(℃)熱伝導率
ステンレス10016.5
100.582
空気0 0.0241

ここではステンレスを取り上げましたが他の金属についてはこちらをご覧ください。

3種類の熱

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2018年3月19日

3つの中では金属が一番熱伝導がいいことがわかりますが、低温調理には向いていません。食材の周囲を金属(と接せさせて)で覆うのは難しいからです。サランラップのように伸縮自在な金属はありません。アルミホイルで包むことは可能ですが、アルミホイルよりも効率的なのが他にあります。

次に空気は熱伝導がよくありません。実際に冷凍食材を解凍するのに常温で解凍するよりも金属の上に置いたり、水の中に入れる方が解凍スピードは早くなります。

冷凍と解凍

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2018年3月24日

解凍と同じように空気を使った低温調理はとても効率が悪い。空気は温度が上昇するまでのスピードが遅い(熱伝導が悪い)ので低温調理のように低温で目標温度を目指す間に、低い温度帯が続いてしまうと食中毒原因菌が活性化して食中毒リスクが格段に上がってしまいます。

ということで低温調理には水や液体が最適。水には金属にも空気にもない良さがあります。熱伝導は金属よりも劣りますが、食材の周囲を自由自在にカタチを変える水が覆うことができます。水って意外と優れたヤツなんですね。

水は空気よりも熱伝導が良いので効果的に食材を加熱することができるのです。

低温調理では水などの液体を使うことで、食中毒リスクを低めながら効果的に食材を加熱することができるのです。

どうやるの?低温調理法のハウツー

低温調理法は最初は新しいやり方に戸惑います。低温のためしっかり加熱できるか心配になるからです。

でも数回調理すればすぐに慣れます。食中毒リスクの低い牛肉からやってみるのがおすすめローストビーフあたりがいいですね。

低温調理法のやり方はシンプルです。60〜63℃の水温を保った水中に、袋に入れた食材を一定時間沈めるだけです。袋に入れずに水中に沈めると食材から旨味が逃げてしまうので避けてください。

そのために必要なのは次の3つ。

  • 水と食材を入れる容器
  • 温度計
  • ジップロック(食材を入れる袋)

水と食材を入れる調理器具は色々あります。詳しくはこちらの記事で紹介していますのでご覧くださいね。

低温調理豚バラ炙りチャーシュー

低温調理の豚バラ炙りチャーシュー

2018年4月4日

低温調理ステップ

  1. 下味をつけた食材を袋に密閉する
  2. 容器に目標温度(60〜63℃)より少し高めの水を入れる
  3. 1を2に入れる。と、温度差で水温が下がる
  4. 3を目標温度に安定するよう湯温を調整する
  5. 一定時間(1時間〜数時間)そのままにする

これで肉を低温調理することができます。低温調理は「温度」と「調理時間」の掛け算です。肉の種類(牛・豚・鶏 etc.)や肉の部位(バラ肉・もも肉・胸肉 etc.)によって温度と調理時間は変わります。

それによって食感が変わりますので、お好みの温度と時間を見つけてみてくださいねー!

くれぐれも、低すぎる温度や短すぎる時間は食中毒リスクが高く大変危険なのでお気をつけください。

加えて、あくまでも肉の中心温度が目標に達してから一定時間加熱することが必要です。「60℃のお湯の中に30分入れた」ではNGで、これでは肉中心まで加熱することができないからです。こうした間違った低温調理は食中毒につながるので絶対にやめましょう。

参考文献

ひかる




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ABOUTこの記事をかいた人

2013年大卒。社員3名零細スタートアップベンチャー新卒入社。組織開発コンサルに従事後、17年12月末退職。収入0からリスタート。好きなことやりたいことに素直に!ブログを綴りながら生きていく!人生実験してます。