緑、赤、黄色に白と野菜は料理に彩りを加えます。
当たり前っちゃ当たり前ですが、それぞれの色にはその色たる所以となる犯人(以下、シキソ犯と命名)がいて、そいつを特定して特徴を理解しておけば、料理で出したい色を出せるようになるというのが今回のお話。「それぞれの色にはその色たる所以となる」ってデカルトの「我思うゆえに我あり」的な感じでかっこいい。
シキソ犯は4種類だけ覚えておけば十分
これが今回の結論。シキソ犯はすごいシンプル。こんな記事にする必要ないぐらい簡単です。
- クロロフィル:緑色のシキソ犯。名探偵コナンに似た名前の薬品が出てきますが別人(クロロホルム)。
- カロテノイド:黄色と橙色のシキソ犯。赤色は??と思ったら黄橙を混ぜたら赤色になった。色混ぜ調べサイトがありました
- フラボノイド:白色・
無職無色のシキソ犯。僕の漢字変換機能では「無職」が出てきた。悲しい。 - アントシアニン:赤色と青色と紫色のシキソ犯。赤と青って全然違う色じゃない?という答えはCMのあと!
クロロフィル、カロテノイド、フラボノイド、アントシアニンの4つだけ。こいつらが野菜の中に潜んでいて、野菜の種類によってそれぞれの割合が違うから目に見える色も変わるということ。
シキソ犯の素性を丸裸にする
4つ一つずつ紹介しましょう。
クロロフィル
代表的な野菜:葉物野菜、ブロッコリー、にら
緑色=クロロフィルという理解でOKです。わかめのような海藻類にも多く含まれています。クロロフィルは葉緑素なので、野菜の細胞内で光合成を担ってます。太陽光を使ってCO2(二酸化炭素)H2O(水)からO2(酸素)とC6H12O6(炭水化物)を作るあれです。
6H2O + 6CO2 → 6O2 + C6H12O6
今回はこんな話はどうでもよし。
クロロフィルにはマグネシウムが含まれているということの方が重要。クロロフィルを長時間加熱するとこのマグネシウムが外れ、生野菜に含まれるオキシターゼという酸化酵素の働きにより色褪せます(フェオフィチン)。オキシターゼは40℃付近が一番働きやすい温度です。
またpHという概念も重要です。理科で酸性!アルカリ性!ってリトマス試験紙でやったあれです。クロロフィルは酸に非常に弱いので茹で汁や煮汁では酸性になることを防ぐのがポイント。下の表では最左が酸性、7.0あたりが中性、最右がアルカリ性です。
食品におけるpHは、美味しいものが中性〜酸性、美味しくないものはアルカリ性と覚えてしまってOKです。日常的に私たちが食べるものはほとんどが中性〜酸性。アルカリ性は重曹ぐらいなもので、そもそも重曹も美味しくないため積極的には料理に使われていません。
こうした特徴を考慮してあげないと、せっかくの緑色を使いたくても使えなくなってしまうわけです。
色褪せさせないためには
- 茹でる時は熱湯から ※水からだと長時間になるためNG。
- 熱湯はたっぷりの量で ※野菜投入時の温度低下とpHの低下(酸性化)を防ぐ
- 熱湯の中に食塩を1〜2%加える ※食塩のナトリウムイオンが酸化作用を抑える
- 茹で上がったら冷水にさらす ※高温だとマグネシウムが抜けやすい
- 味付けは塩。 ※醤油や味噌は自身の有機酸の影響で酸性(pHが低い)が強い
このあたりがポイントです。緑色のシキソ犯、クロロフィルを上手に活かしましょう!犯人を活かすって変な例えにしちゃったなあ。
カロテノイド
代表的な野菜:にんじん、かぼちゃ、赤ピーマン、トマト
カロテノイドは黄色と橙色を司っています。シキソ犯の中でも神。なぜならビタミンA活性や抗酸化活性も持っていたり、さらにはクロロフィルのように温度やpHの影響を受けないからです。にんじんやかぼちゃが調理中に変色下ってあまり経験しないですよね。
しかーし、調理前の保存時には注意が必要です。カロテノイドは光に弱い特徴があります。さらに、調理後に安定するという特徴を生かして、先に下準備をして保存してしまうのもありです。
- 直射日光を避け、暗い場所で新聞紙などで包む ※光を遮断する
- 長期保存を避ける ※野菜自体の酵素による酸化で褪色する。下ゆでしてから保存する
- 調理するなら水より油が向いている ※カロテノイドは油に溶けやすく、体内で吸収しやすい
フラボノイド
代表的な野菜:たまねぎ、れんこん、カリフラワー、ごぼう
白色と無色のシキソ犯フラボノイドはpHの作用で色が変わります。
酸性:無色・白色 アルカリ性:黄色・褐色
さらに「鉄」やアルミニウムと共存するとこれまた色が変化します。
鉄:青色・緑色 アルミニウム:黄色
ポイントをまとめます。
- 白色を出したいなら酢を加える ※ピクルスや酢の物。酸性にする
- フライパンや鍋はアルミ、ステンレス、ホーローを使う ※鉄製での調理は黒ずむ
- ラーメンの麺が黄色なのはアルカリ性だから ※麺には小麦粉にアルカリ性の重曹を加えている
アントシアニン
代表的な野菜:なす(の皮)、紫キャベツ、赤しそ
鮮やかな紫色が印象的な野菜たちですね。アントシアニンはフラボノイドと似ています。pHや金属の影響で色が変わります。特に酸性になると色が安定(褪色しにくい)します。梅干しが赤いのは梅から出る酢と赤しそのアントシアニンの効果です。酸素と結びつく酸化も起きやすいので、酸化酵素の働きを抑えることも褪色させないポイント。
酸性:赤色 中性:紫色 アルカリ性:青色
アルミニウム・鉄:紫色の安定
- ナスのぬか漬けには鉄球や釘を一緒に入れる ※鉄の効果
- ナスは素揚げにしてから煮る ※高温調理で色を安定させる。80℃未満で色が変わりやすい
- いちごジャムなどは空気に触れないよう密閉する ※酸化を防止
まとめ
今回紹介したシキソ犯は野菜だけでなく、様々な食材に含まれています。自分が扱う食材にどのシキソ犯が多く潜んでいるかは見た目の色から考えて大体の場合はOKです。判断がつかない場合はググったらすぐに出てくるでしょう。「ナスは素揚げするんだ」と一つひとつの野菜を全部「覚える」のは大変ですが、4つのシキソ犯という風に理解すれば「覚える」のではなく自分で「考えられる」ようになります。
参考文献
ひかる
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