こんにちは。ひかるです。
面白い論文を読みました。
>>上柳 當美子(1984)「魚肉における食塩の浸透について -魚の種類による相違- 」
魚の下ごしらえとして塩をする(振り塩・立て塩)ことが多々あります。味付けのため、余分な水分を抜き臭みを取るためなどなど。ただ、こうした振り塩・立て塩は魚の種類や捌き方などによって時間や食塩量が異なりますが、この基準があいまい。
ということで、この論文ではタラ・タイ・カツオ・アジ・サバ・タチウオを用いてそれぞれの食塩の浸透の様子を比較検討した結果をまとめています。
- サマリー
- 塩は皮よりも身からの方が浸透しやすい
- 水分が多い魚ほど、食塩が浸透しやすい
- 脂肪含量が多い魚ほど、食塩が浸透しにくい
実験概要
実験に使ったのは白身、赤身など肉質が異なる次の魚。
- タラ
- タイ
- カツオ
- アジ
- サバ
- タチウオ
いづれもウロコを取り、三枚おろしにした背身中心部(皮付き)を厚さ1cmの直方体に整えたものを用意。魚肉重量2%の振り塩を「皮面」「身面」それぞれに施す。
→これによって、皮からor身からの振り塩の違いも比較します。
振り塩後、5・15・30・60分ごとに魚肉中の食塩量を測定。また立方体を上下に2等分した下半分を用いて、拡散度合いも同様に測定。
→振り塩をした表面から遠い部分(2等分下半分)まで塩が届いているかを調べています。
論文のポイント
僕が勉強になった部分に絞ってまとめます。詳しくは次のリンクからどうぞ。
>>上柳 當美子(1984)「魚肉における食塩の浸透について -魚の種類による相違- 」
まずは6種の魚それぞれの実験結果を抜粋。
どの魚も、振り塩直後の吸塩量が多く時間をかけて緩やかに吸塩していきます。
「皮面」より「身」からの吸塩量が多い
程度の差はありますが、どの魚種も身からの方が食塩がよく浸透していることがわかります。皮からはあまり浸透しない。
エラや内臓をとってそのまま焼き魚にするときは塩の量を多くし、鮭など切り身の焼き魚では塩分量を減らすなどするのが良さそうです。これは従来通りのtipsです。
>>魚を焼くならグリルより串!簡単にお店の味が再現できる焼き方
食塩浸透の違いは「水分」と「脂肪」にあり
魚種間の食塩吸収量の違いを比較するグラフがあります。
身・皮ともに吸塩しやすい順から「タラ・タイ・カツオ・アジ・(タチウオ・サバ)」となりました(タチウオとサバは身と皮で異なる)。
それぞれの魚には水分と脂肪量に違いがあります。
表2から明らかなように、水分量が多い魚ほど食塩を吸収しやすく、また一方で脂肪量も食塩九州に関する変数として機能していて、脂肪量が多い魚ほど食塩を浸透しにくい。
著者は次のように考察しています。
食塩は水溶性で水によく溶解するが、脂肪には溶解しないため、また脂肪は水と親和しにくいので、脂肪は食塩の浸透を妨げるものと考えられる。
以前のエントリーで水と油(脂)について取り上げましたが、食塩はまさに水との親和性が高い物質。脂肪が食塩の浸透を妨げるのは納得です。
今回取り上げた6種以外の魚を取り扱うにも、魚自体の水分や脂のつき具合を考慮して塩分量をコントロールするのに役立ちそうです。
参考文献
ひかる
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