こんにちは。ひかるです。
「定食屋さんのような美味しい豚の生姜焼きを自宅で作れないの?」
定食屋さんの豚の生姜焼き、たまらなく美味しいですよね。肉はもちろん、玉ねぎやタレだけでも白いご飯がいくらでも食べられちゃう。そんなプロレベルの生姜焼きを自宅でつくります。そのコツは焼き方。生姜焼きは焼き方次第で大きく仕上がりが変わります。
以前のエントリーでは、今回の考え方を応用した「トンテキ」について紹介しています。水島弘史さんという料理をロジカルに研究されているシェフの調理法も参考にしました。最後に参考文献とした水島シェフの著書があります。
>>トンテキの焼き方のコツをまとめました 〜安い肉を劇的に美味しくしよう〜
サマリー
- タレよりも何よりも、肉の焼き方が豚の生姜焼きの全てを握る
- 生姜焼きのタレはキッチンの調味料で自作するのが一番効率がいい
- 肉は「弱火」加熱を厳守する
- 出始めの肉汁は臭みの元。拭き取ってしまう
- シャキシャキ玉ねぎはアブラでコーティングしてから加熱する
- 玉ねぎとタレをメイラード反応させて香ばしい香りを引き出す
- 肉とタレを合えるのは火を消してから
CONTENTS
生姜焼きの焼き方のコツの前に・・・
用意するもの
- 豚こま
- 玉ねぎ
- 生姜焼きのタレ(簡単に作れます)
豚の生姜焼きはシンプルな料理です。材料も少なく、思い立ったらすぐに作れます。生姜焼きの味の決め手となるタレも最近では市販のものが売られていたりもしますが、キッチンにある調味料だけで簡単に用意できます。
市販の生姜焼きのタレ、便利かもしれませんが1回使って、何ヶ月も冷蔵庫に寝たまんまってことになりませんか?気づいたら賞味期限が切れてしまうなんてことも・・・。たった1回しか使わず、捨てる羽目になってませんか?
それなら1回ぽっきり分量のタレを毎回自作した方が無駄がありません。
冒頭にも書きましたが、豚の生姜焼きは火の入れ方(焼き方)が美味しくするコツ。自作するシンプルなタレでも十分に美味しくなりますのでご安心ください。
生姜焼きのタレを用意する
生姜焼きのタレをキッチンにある調味料で用意します。
- 生姜(チューブでもOK)
- 醤油
- 酒
- みりん
- にんにく(チューブでもOK)
「醤油:酒:みりん=1:1:1」の分量です。にんにくは香りづけ程度に、タレ100mlに対して1gぐらい。好みでもっと入れてもOKですがあくまでも生姜が今回の主役なので控えめに。タレの中心となる「しょうが」はチューブでも大丈夫です。
せっかくなら生の生姜(おろし立て)の方がしっかりとしたイイ香りが出ます。生姜の皮はスプーンのお腹でこすると簡単に剥けます。
おろし金ですりおろします。タレ100mlに対して10g(約10%)ぐらい。
調味料を合わせたらタレの完成。調理中に加熱するのでまぜ合わせるだけで大丈夫です。タレが用意できたら肉を焼いていきます。焼き方のコツをまとめました。
豚の生姜焼きの焼き方のコツ
豚の生姜焼きの焼き方のコツを写真と一緒に作る手順通りにまとめます。
その1:熱々のフライパンは使わない
肉料理のイメージの話、油をひいた熱々のフライパンに肉を入れて「ジュワ〜」というあの音。美味しそうですよね。ただし、あれは間違いです。熱々のフライパンに肉を乗せると、肉が火傷します。要するに肉が必要以上に硬くなってしまうということです。
肉のタンパク質は熱々のフライパンよりもずっと低い温度から火が通り始めます(タンパク質の熱変性)。厚生労働省発表の資料には次のようにあります。
Q: 豚の食肉の中心部の温度を 63℃で 30 分間以上加熱するかこれと同等以上とされています が、どのように調理すればいいのですか。
A:63℃で 30 分間以上加熱するかこれと同等以上の殺菌効果を有する方法とは、加熱温度が高く なれば加熱時間が短くなることから、例えば、75℃1分間以上の加熱でも差し支えありません。
出典:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/150602hp.pdf
63℃でもしっかり時間をかければ豚肉を食べられる状態に加熱できるということ。「低温でじっくり」を応用した調理法に「低温調理」があります。低温調理についてはこちらもどうぞ。
熱々のフライパン(表面温度180℃前後)では高温過ぎてしまいます。タンパク質が熱変性する温度を圧倒的に超えてしまっているので、肉が急速に縮みあがり肉汁が流出、肉内部の水分量が少なくなるため硬い食感になってしまうわけです。
熱々のフライパンに肉を投入するというのは、ヒッタヒタに濡らしたスポンジをおもいっきり絞り上げるようなものです。絶対ダメ。
それでは、正しい生姜焼きの焼き方を紹介します。
使うのはグラム100円を切る安い豚こま肉。肉質よりも焼き方を変えれば十分美味しくなります。
ここで焼き方のコツ1つ目。火をつける前の冷たいフライパンに肉を載せます。肉を載せるのは絶対にフライパンに火をつける前。
サラダ油を投入します。フライパンにはまだ火をつけません。
サラダ油と肉をなじませ、肉表面にサラダ油をまとわせます。肉と肉がくっつくのを防ぐ、油でコーティングさせることで焼きムラができないようにするためです。これも焼き方のコツ。
その2:「弱火でじっくり」が肉を柔らかくする
ここまできたら初めて火をつけます。
絶対に強火にはしません。使うのは「弱火」です。これが生姜焼きの焼き方のコツ2つ目。前段でも書きましたが、強火にしてしまったら急激に温度が上昇し肉が縮むのも急激になります。すると、肉汁が流出して・・・あとは書いた通り。
弱火にすることで徐々に温度が上がるので肉が縮むスピードも緩やかになるため、肉汁の流出量を比較的防ぐことができます。
点火して数分後、少しずつ「ジュー」とおなじみの肉が焼ける音がしてきますのでご安心を。
肉に火が入り始めると次第に水分が出てきます。
この肉汁(アク)をしっかりキッチンペーパーで拭き取りましょう。これも美味しい生姜焼きには大切なコツです。
「肉汁にはうま味がつまっている」
というイメージがありますが、同時に「アク」も含まれています。アクのほとんどは料理に必要ない雑味で、臭みにつながります。肉を煮たりスープづくりで浮いてくるアクを丁寧に取るのと同じ理屈です。特に最初に流出する肉汁はうま味よりもアクの方が多いと言われているので、しっかり取るわけです。
拭き取った後、また少しすると肉汁(というか豚の脂)が出始めますが、これは拭き取らないでください。今度はアクよりも「うま味」がつまっているので残します。このうま味のつまった肉汁がタレと絡まって生姜焼きを美味しくします。
その3:肉が硬くなる原因は「加熱時間」にあり
通常の生姜焼きの焼き方なら、このまま玉ねぎを追加、タレを投入して豚の生姜焼きの完成!となりますが、これはオススメできません。なぜなら、加熱時間が長くなるために肉が硬くなってしまうからです。
美味しい豚の生姜焼きのために、肉は一度取り出します。この一手間が大きく仕上がりを変えます。
もうひとつ付け加えると、火が完全に入る手前で肉を取り出します。肉はフライパンから取り出した後も高温を保っているので余熱で火が通るからです。フライパンから取り出してもすぐには温度は下がりません。温度が下がる過程でも加熱されることを計算してちょっと早めに取り出すことで肉の焼き過ぎを防いで柔らかい食感に仕上がります。
画像のように焦げ目がついておらず少しピンクがかってるぐらいで取り出しても、余熱で火が入ります。バッドに取り上げます。
その4:玉ねぎをシャキシャキに仕上げるなら、「順番を変える」だけ
肉を取り出すと、フライパンには豚肉から出た脂(とサラダ油)が残っています。こいつを使って玉ねぎを加熱します。
僕は「豚の生姜焼きは『玉ねぎ』を食らうもの」と思っています。豚肉から出た脂と生姜焼きのタレを吸った玉ねぎの存在感が、豚の生姜焼きという料理を不動の「白飯のお供」にしているのではと思います。「豚の生姜焼き」は豚肉と玉ねぎのダブル主演作品なのです。
そんなわけで、玉ねぎも美味しく料理したい。そしてこれは完全に好みですが・・・。シャキシャキの玉ねぎが豚の生姜焼きにはお似合いです。もちろん、火が通っていない生の状態ではありません。火を通しても、しなしなにならないシャキシャキ玉ねぎの存在感を僕は生姜焼きに求めています。
生姜焼きの玉ねぎをシャキシャキに炒めるにもコツがあります。
玉ねぎは繊維と水平方向に「厚めの薄切り」に切ります。繊維と水平にカットすることで細胞壁が破壊されにくいので水分が流出しにくいという理屈です。ちなみに、繊維を断ち切るように垂直方向にカットすると細胞壁が破壊されて柔らかくなります。
ただし、切り方よりも重要なのはやはり焼き方。焼き方の「順番」を変えると見違えるほど食感が変わります。
肉と同様、フライパンに火をつける前に玉ねぎと豚の脂を混ぜ合わせ、玉ねぎの表面をコーティングします。脂が足りなかったらサラダ油を足してください。多めの油がポイントです。表面を油でコーティングしフライパンと玉ねぎが接しないようにすることで、水分が流出せずシャキシャキの状態で加熱することができます。
野菜炒めに応用すると、中華料理店で食べるようなシャキシャキ食感に仕上がります。実際、中華料理では「油通し」という工程が「炒める」前にあります。熱した油の中に食材をさっと通して表面に油の膜を作る工程です。中華料理屋さんの野菜炒めが美味しいのは、「超強火」ではなく「油通し」にあるんです。
ちなみに、家庭のキッチンでも美味しい中華を作るならこちらのエントリーをどうぞ。
>>自宅でパラパラのチャーハンが食べたい!100%成功する作り方
油をなじませたら初めて点火。ここでも弱火で十分です。じっくり火を通します。
通常の手順は・・・
- フライパンに油を引く→点火→玉ねぎ投入
ですが、順番を変えて・・・
- 玉ねぎを投入→油と混ぜ合わせる→点火
とすることで、玉ねぎがシャキシャキ食感に仕上がります。
玉ねぎに油をまとわせた後に弱火で加熱する。これが生姜焼きを美味しくする焼き方です。
その5:「メイラード反応」が料理を美味しくする
料理というのは様々な化学反応を応用したサイエンスです。
例えば、肉を生食するよりも「安全に」「効率的にエネルギー摂取するために」、加熱という調理法によって殺菌効果やタンパク質の熱変性を利用しています。味噌や醤油をつくるための「発酵」なんて、微生物の作用を利用していたり。他にも数知れず。
豚の生姜焼きにも様々な化学反応があるわけですが、中でも「メイラード反応」を考慮します。簡単にいうと「焦がして香り付けをする」ということ。
くわしくはこちらのエントリーをどうぞ。
玉ねぎをほとんど加熱できたら生姜焼きのタレを投入します。ここで一気に短時間だけ強火にしてタレを焦がします。メイラード反応は「糖」と「タンパク質」を加熱することで生まれます。
肉汁や玉ねぎのタンパク質とタレの糖です。タレを焦がす(メイラード反応)ことで、香ばしい生姜焼きに仕上がります。
ふつふつと泡がせわしなく沸いたら完了、火を止めます。
火を止めた状態で肉を戻し入れ、タレ・玉ねぎと混ぜ合わせます。肉は十分に加熱されているしタレは高温なので再点火する必要はありません(硬くなってしまうので・・・)。
キャベツの千切りの上に盛り付け、お好みで白ごまなんかふっちゃったりしたら豚の生姜焼きの完成です!
もうちょっとタレを多めにすると、濃いめの味付けになります(僕は濃いめの方が好み)。豚肉のアブラや玉ねぎの香りが移ったタレをご飯にかけて食べるのが最高に美味しいですよね。
「生姜焼きの焼き方のコツ」の考え方
最後にまとめ。今回紹介する焼き方のコツは、定食屋さんがやっているかというとおそらくやっていないかも。科学的な原理原則に基づいて美味しく作るなら・・・という建前での紹介です。
「肉が焦げているぐらい焼いた方がうまい」
「しなしな食感の玉ねぎの方が好き」
こうした意見もあるかもしれませんが、個々人の嗜好性によりますので悪しからず。
さて、今回紹介したように生姜焼きは焼き方が重要です。これはトンテキのエントリーでも同じように書きました。
肉料理の美味しさを決めるのは肉内部の水分量。水分が少ないとパサパサと固い食感に、水分量が多いとジューシーで柔らかになります。残念なことに一般的な調理方法ではパサパサした肉になってしまいます。
熱したフライパンに「ジュワ」はまやかしです。肉の水分流出を防ぐため、油で表面をコーティングし「弱火」でじっくりと加熱。余熱にも注意して早めに加熱を終え取り出すことを紹介しました。
次に玉ねぎ。豚の生姜焼き第2の主役としてシャキシャキとした食感を引き出すため、中華料理の油通しを応用するのが美味しい焼き方です。その玉ねぎに豚肉の脂の甘み、濃いめのタレを染み込ませたら、玉ねぎも立派な主役になります。
他の肉料理でも基本は同じ工程です。料理は上達するのが大変と思われますがシンプルです。料理の調理法や手順の裏側にある理屈と一緒に理解すると忘れませんし、他の料理にも応用することができます。
料理がうまくなるにはレシピを見ながらそのまんまつくるよりも、原理原則を理解することが大切です。僕自身まだまだ勉強中ですが、こうした調理科学分野の勉強を始めてから料理が格段につくりやすくなったように思います。
参考にした水島弘史シェフの焼き方とは厳密は違う部分がありますので、「僕の焼き方=水島シェフの焼き方」と勘違いしないように気をつけてくださいね。水島シェフの名誉に関わりますので予めお断りしておきます。
以上、豚の生姜焼きの焼き方のコツを手順と併せて紹介しました。
ぜひ作ってみてくださいね!
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ひかる
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