角煮を柔らかくする科学(方法)

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こんにちは。ひかるです。

今回は角煮の科学です。

豚肉をホロッホロとろとろに柔らかくするのに何時間も煮込む必要があるのか?

について考えてみます。

 

結論、必要ありませんでした。調理時間30分で角煮を柔らかくする方法をまとめます。

角煮を柔らかくする原理

まずは角煮を柔らかくするその原理原則について。今回の場合、いつもの低温調理法は向いていません。その理由は部位にあります。

 

「コラーゲンのゼラチン化」と「低温調理法」

角煮に使われる豚肉は一般的にはバラ肉。豚肉の中でも脂身の割合が非常に多い部位で、豚肉のコンセプトは「脂の甘みを楽しむ」(と勝手に思っている)。豚バラ肉はそのど真ん中です。

他に豚肉の馴染み深い部位として豚肩ロースがありますが、こちらは赤身比率が高く低温調理でむっちり仕上げると美味しくいただけます。低温調理は他にも鶏むね肉や牛もも、牛肩ロースなどとも相性がよくフライパンで焼いたり煮たりするのとは全く異なる仕上がりになります。低温調理の原理について詳しくは以下にまとめました。

>>低温調理の温度について。メリット・原理・やり方

料理科学

低温調理の温度について。メリット・原理・やり方

2018年4月6日

 

一方、角煮に使われる豚バラブロックは低温調理との相性がよくありません。確かに低温調理と同じ温度帯である「60℃以上で3時間」加熱すればコラーゲンがゼラチン化してプルプルになりますが、今回は短時間で角煮を柔らかくすることを目標としています。

脂身のほとんどを占めるコラーゲンをゼラチンに変性させることで、あのプルプルとした柔らかい食感になります。そしてゼラチン化は温度が高いほどその変性が進むという文献もあります。

角煮に使われるバラ肉など脂身が豊富な部位を短時間で柔らかくするには別の調理法が適しています。

 

圧力鍋による加圧調理。組織を徹底的に破壊する

高温度で短時間というと、真っ先に思い浮かぶのが圧力鍋による加圧調理です。

「なんだ、角煮を圧力鍋で作るなんて当たり前じゃないか」

という意見ごもっともでこの方法が良さそうですが、この後紹介するように少し調理法を変えます。

圧力鍋は文字通り、鍋の中の圧力を高めることで地上では100℃までしか上昇しない水の沸点をさらに高くしてしまうという素晴らしい調理器具です。加圧力が強いものだと水の沸点は約128℃ほどまで上がります。

先述したようにコラーゲンのゼラチン化には「高温」が必要なので、圧力鍋でガッツリ高温調理してしまおうという考え。128℃ほどの高温が必要かというとそれは根拠がないのですが、実証してみてうまくいけばそれでよろし。

僕は熱心な低温調理教の信仰者なので、肉料理は「低温で」「優しく」調理するのが良いと思い込んでいたのですが、これは脂身が少ない部位についての話(もしくは何時間もの調理時間を確保する場合)。

今回、圧力鍋を使って肉組織を徹底的にぶっ壊すベクトルに振り切ります。63℃以上で加熱したら収縮して硬くなるけれど、それを超越して128℃で繊維をぶっ壊そうという無茶苦茶論です。果たしてどうなるか(結果成功するのだけど)。

 

「柔らかくする」「味付けする」を分けて考える

圧力鍋調理による角煮。ごくごく一般的な調理法ではありますが、ネットレシピのやり方には少し疑問があります。

そのほとんどは「肉と調味料を一緒に圧力鍋に」というやり方です。肉は砂糖や醤油など塩分や糖分を添加してしまうと縮む(硬くなる)性質があります。これは文献にもありますし、僕も料理をしていく中で改めて気づかされた点です。

圧力鍋で柔らかくしたい一方、肉を硬くする原因を一緒にしてしまうのは非効率なのでは、それなら「肉を柔らかくする」「味付けする」を分けて考えるべき、という論です。

そこで、今回は圧力鍋には調味料を加えず水だけで調理します。十分に柔らかくした後に、味付けをする。これを別の工程とします。

 

味は染み込まない。とろみをつける

「肉に味が染み込んでいる」

的なお話がよくありますが、科学的には厚みのある肉の中心まで味が染み込むということはないようで。表面からわずかなところまでしか味は浸透しないという学者さんの意見があります。

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僕もわりとこの考え方に立っていて、加熱後で繊維が縮んでしまった肉に味を染み込ませるのは難しいと考えています。

今回の角煮も同様です。特に圧力鍋でガツガツ高温調理するので肉はかなり縮んでいるはずで、隙間のないところに味は染み込まないだろうと。そこで肉表面に味付けを留まらせる方法を取ります。調味液に片栗粉でとろみをつけることで肉から調味液が落ちてしまう量を減らし、肉と調味液を口の中に入れてしまおうということです。実際そうした角煮は昔からあって、きっと味付けのためなんだと思います。こうしたレシピの裏側にある理由を理解するとレシピを覚える必要がないですね。

 

ということで、僕なりに考察した角煮を柔らかくする原理をまとめます。

  1. 圧力鍋でがっつり加圧調理する
  2. 加圧調理は「水」のみで行う
  3. 調味液はとろみをつける

 

角煮を柔らかくする方法 実践編

スーパーで豚ばらブロックを調達。ごくごく一般的な100円/gの安価なもの。これを柔らかい角煮に仕立てていきます。

 

圧力鍋に水を用意します。大量の水は使いません。豚肉を煮た水はそのまま調味液に使うので大量の水では味が薄まってしまいます。豚肉が半分浸かるぐらいで十分です。

 

香り付けにニンニクを加えます。皮付きで電子レンジ加熱しておくと翌日においが残りにくくなります。

>>家二郎の”ニンニクにおい問題”における傾向と対策

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2019年11月7日

 

沸騰させたところに豚バラ肉とニンニクを入れて。

 

フタをして高圧加圧。圧力鍋はパール金属。インスタントポットもおすすめです。

 

>>低温調理・自家製ラーメンに大活躍コストコの「Instant Pot(インスタントポット)Nova Plus」

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2019年10月11日

 

鍋フタのピンが上に上がり、「シュー」と加圧が始まってから20分間放置。加圧していれば弱火にして大丈夫です。

 

圧が抜けてからフタを取ります。狙い通り、プルプルに肉が柔らかくなっています。加圧調理によってコラーゲン(脂身)はゼラチン化し、筋肉組織(赤身)が破壊されてもろくなっています。一口大にカットしますが、崩れやすいので気をつけます。

脂が茹で水の中に溶け出したり縮んだりしたことで肉はだいぶ小さくなります。

 

鍋には煮崩れたニンニクと茹で水があります。この水には肉の脂肪分やうま味成分が溶け出しています。優れた出汁が出ているわけです。捨てずに調味料を加えて味付け。味を見ながら調整してみてください。

  • 醤油:3
  • 砂糖:2
  • 酒:4

 

水分を飛ばして味を濃縮したいので、調味料を加えたところでさらに5分加圧。

 

最後に水溶き片栗粉でとろみをつけたら角煮の完成です。とろみをつけたら圧力鍋加圧は絶対にしないこと。危険です。

 

脂身はゼラチン化によってプルプル。赤身は繊維が壊れてほろっと箸で持ち上げると崩れそうになるほど。肉にはとろみのついたタレがまとわりついているので味付けもしっかりと。狙い通りです。

低温調理教徒の僕にとって、高温でガッツリ加熱するという肉調理は新しい発見でした。「高温 = 硬くなる」をつきぬけると、トロトロ食感が待っていました。しばらくは加圧調理にハマりそうです。

 

この日はニシンの塩焼き、ふるさと納税のホタテと一緒に。

 

このレシピでは脂抜きをしていません。気になる場合は冷蔵庫で冷やし固まった脂の上澄みを取り除けばOKです。脂っこくなることはありません。

 

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パール金属 圧力鍋 5.5L IH対応 3層底 切り替え式 レシピ付 クイックエコ H-5042

 

参考文献

>>食品中コラーゲンの加熱による変化 (第1報)豚皮コラーゲンの溶解性|杉田浩一・白井邦郎・和田敬三・川村亮(1977)、日本食品工業学会誌24巻6号

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ひかる




2 件のコメント

    • お返事おそくなりごめんなさい!

      >>加圧調理だと水分は飛ばなくないですか?
      →加圧調理のメカニズム上、調理前後で水分量は変わり(減少し)ます。
      一定以上の圧力がかからないように蒸気を逃しているので。
      「水分が飛ばない状態」というのは完全密閉状態で加圧し続けることで、
      ものすごい爆発が起きて超危険、もちろん市販の圧力鍋はそうならないように
      蒸気排出穴や安全弁が備わっています。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    2013年大卒。社員3名零細スタートアップベンチャー新卒入社。組織開発コンサルに従事後、17年12月末退職。収入0からリスタート。好きなことやりたいことに素直に!ブログを綴りながら生きていく!人生実験してます。